
STO(セキュリティトークンオファリング)従業者の比較(アメリカと日本)

ブロックチェーン技術を用いた新たな資金調達の形態「STO(セキュリティトークンオファリング)」ですが、アメリカを中心に事例が増加しています。
今回は、STOとはどういった技術なのか、どうしてSTOが行われているのか、といった点について解説していきたいと思います。
また、STOなどの資金調達の仕組みにまつわる金融庁や証券会社の動向にも触れていきます。
STO(セキュリティトークンオファリング)従業者の事例(アメリカ)
まずは、「STO(セキュリティトークンオファリング)」とは一体何なのか、どういった事例が存在するのか、といった点を説明していきます。
H3.STO(セキュリティトークンオファリング)とは
聞き慣れない「STO(セキュリティトークンオファリング)」という用語の意味から解説していきたいと思います。
STO(セキュリティトークンオファリング)は、簡潔に言うと、「セキュリティトークンを使った資金調達」のことです。
ちなみに、セキュリティトークンは、ブロックチェーン技術を用いて、有価証券を紙からデジタルに置き換えたものです。このセキュリティトークンを売り出すことで、資金調達をする行為をSTO(セキュリティトークンオファリング)と呼びます。
アメリカでの事例
STO(セキュリティトークンオファリング)は、アメリカを拠点に広まりつつあります。
具体的には、
・PolymathやSecuritizeといったトークンを発行するプラットフォーム
・OpenFinanceやtZEROといった流通のプラットフォーム
などがアメリカでビジネスを行っています。
実際にアメリカでは次のようなSTOのビジネスが行われました。
スクーターのシェアリングサービスを運営している「Spin」という企業が、ベンチャーキャピタルからの資金調達の代替手段としてSTOを実行しました。
この際、「Spin」は自社のシェアリングサービスで使うスクーターを担保としたトークンを発行しました。
セキュリティトークン技術が盛んになれば、株式などの有価証券の取引の利便性が向上するのではと期待が寄せられています。
SECの規制
STO(セキュリティトークンオファリング)が注目されている理由の1つに、SEC(米国証券取引委員会)の取り締まりがあります。
SECは、「米国資本市場・証券市場で投資家を保護すること」を責務として掲げています。
無認可ICOの縮小
SEC(米国証券取引委員会)は、ICO(イニシャル・コイン・オファリング)を、有価証券と判断しています。ICOでトークンを発行する際にはSECの登録が必要とみなし、無登録での発行を罰したケースもあります。
そのため、ICOは2018年3月のピークから一転して縮小傾向にあります。
実際に、ICOの事例では詐欺に近いものも多く存在し、投資家を保護するためには規制が不可欠な状況でした。
ICOからSTOへ
現在アメリカでは、ブロックチェーン技術を用いた資金調達は、有価証券にまつわる法規制に従うという方針が主流になっています。
そのため、ICOで行われていた資金調達が、SECへの登録が不要な免除規定があるSTO(セキュリティトークンオファリング)に移り始めています。
仮想通貨交換会社が証券業に進出

「STO(セキュリティトークンオファリング)」によって、セキュリティトークンを発行して資金調達しようする企業は今後、どんどん増えていくと予想されています。
そのため、セキュリティトークンを発行したり、運用したりするためのプラットフォームの需要が高まっています。
こうした状況を受けて、仮想通貨取引所もSTOに対応すべく証券業への参入の動きを見せています。
金融庁の規制体制
金融庁では、ブロックチェーン技術の発展を受けて「仮想通貨交換業等に関する研究会」が開かれています。そして、この研究会において、ICOやSTOについても討議がなされました。
ICOやSTOの海外事例をもとに、現状を分析し、これらが資金調達法として大きなニーズがあるとの認識を示しました。新たな法規制を整備する必要性は感じながらも、厳しい規制体制をとることには消極的なようです。
そのため、法的に全面的に禁止するようなことはせず、詐欺的事案の多発を防ぎ適正な取引を行える状態を目指した規制を設けるという方針をとっています。
証券業(野村証券)の動向
仮想通貨交換会社が証券業に進出しているのと逆に、証券会社も仮想通貨技術の分野への進出を図っています。野村証券をはじめ多くの証券会社は、ブロックチェーン技術を用いた投資技術の運用に参入する機会を伺っています。
IPO取り扱い数がトップクラス
野村証券は、IPO(新規公開株式)の取り扱い数で業界トップクラスを誇っています。
主幹事銘柄の多さという強みをもっているため、スタートアップ企業が新たに株式を発行するタイプのSTOと特に親和性が高く、STO分野でも大きな役割を果たしていくのではないかと期待されています。
まとめ

セキュリティトークンを用いた「STO(セキュリティトークンオファリング)」という資金調達の方法は、
・新しい形の投資や資金調達の実現
・ICOなどと比較して法的な安定感がある
・資金調達の流動性が向上する
といったメリットによって大きな注目を集めています。
現状ではアメリカでの事例が中心ですが、日本国内でも法的規制が整備され参入する事業者が増加することが見込まれるため、STOが活発に行われる日も近いかもしれません。